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愛知県での麻しんの流行

 愛知県では、平成30年4月11日に麻しんを発症した中学生の報告以来徐々に広がり、5月までで25名が報告されています。流行は、発端者が受診した病院やクリニックで接触したと思われる職員やたまたま居合わせた方に広がり、またその方たちからお子さんやご家族、学校での同級生たちに広がっています。しかし、タイ旅行帰りで発症された全く別ルートの方や、感染経路が不明な方もいらっしゃいます。

 麻しんは、昔は「命定め」とも呼ばれ。子どもは皆がかかる病気で死亡率も非常に高い病気でした。麻しんウィルス自体による肺炎や脳炎などの重篤な合併症に加え、罹患後約1ケ月強い免疫不全の状態となるため、他の細菌感染による肺炎や敗血症などが引き起こされることが多いためです。麻しんはインフルエンザや他の感冒が飛沫・接触感染であるのに対し、空気感染であるので、離れたところにいても、同じ空間にいればあっという間に感染が広がる伝染性の強い疾患です。

 わが国は先進国としては遅ればせながらやっと2015年に、WHOより土着のウィルスが撲滅された「麻しん排除状態にある国」として認定されました。ですから、現在は10年前のように日本由来のウィルスがどこにでもいるという状況ではありません。しかし、国際交流の盛んな昨今、海外で麻しんウィルスにかかり日本で発症した方から流行がはじまるエピソードが、毎年のように起こります。今回の流行も、台湾で罹患した方が沖縄で発症し広まり、沖縄で罹患した方が愛知県で発症したことが始まりです。また、発端者は定期のMR(麻しん風しん混合)ワクチンを1度も接種しておらず、感染者の多くは未接種の中高生~成人、小児期に1度接種したのみの成人、接種前の赤ちゃんなど接触した感染リスクの高い方でした。

 今後も、「麻しん排除状態」を保つためには、95%以上の方が2回のMRの予防接種をきちんと接種していただく必要があります。予防接種後、免疫が上昇するのには2~3週間かかり、流行が発覚してからでは間に合わない可能性があります。ですから、接種できる年齢になったらできるだけ早く接種されることをお勧めします。MRワクチンは1歳のお誕生日から可能です。また2回目の定期接種は年長さんになったら接種できます。

 麻しんの場合、きちんと2回接種し免疫をつけておくことが最大の防御法であります。成人の方も、特に0歳のお子さんをお持ちのご両親やご家族で、全く接種されていないまたは1回しか接種されていない方は、今回の流行が収まった後も接種を検討していただきたいと思います。