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ムンプス難聴

 「ムンプス難聴」とは ムンプス=おたふくかぜウィルスが内耳に感染することによって生じる中枢神経性(感音性)の難聴であり、回復しないおたふくかぜの後遺症です。最近の調査では以前知られていたよりも頻度が高く、約500人に1人もの割合で発症するといわれています。多くは片側の発症なので、症状をうまく伝えられない子どもでは見落とされている可能性もあります。

 おたふくかぜを発症した数日~18日後に急に発症します。耳鳴りやめまいを伴うこともあります。めまいは2か月程度で軽快することが多いですが、難聴は高度 となりやすく、時に完全な’ろう’となります。回復は困難で、中枢性であるため、補聴器での聴力の改善も中等度以上の場合は期待できません。片側性の場合は言語の習得や日常生活への影響も少なく、幼小児では自覚もないことから何年も気づかれず経過していることが多いです。しかし、両側性の場合も15%程度に見られ、この場合は人工内耳 を適応せざるを得ない場合もあります。

 このような難聴はどの子にでも起こる可能性があり、家族は皆聴力が良いとか、日常元気だからとか、聞こえは人一倍良いからとかは関係がありません。唯一の予防はおたふくかぜにかからないこと。おたふくやはしかは昔から子どもはかかるものといった風潮がありましたが、このような一生にわたるリスクを回避できるのであれば避けたいものです。

 おたふくかぜワクチンは1度接種すれば約95%の確率で抵抗力を獲得でき、おたふくかぜを予防できます。一度獲得した抵抗力を長く維持させるために、MRワクチンと同様に1歳と5歳での2回接種が推奨されています。また、おたふくかぜに成人がかかってしまうと、睾丸炎や卵巣炎などのリスクも高まるため、かかっていない方は接種されることをお勧めします。

 多くの先進国では、MMRワクチン(麻しん風しんムンプス混合ワクチン)が標準接種の対象となっています。日本では、現在のところ残念ながら任意接種です。これはMMRの副反応である無菌性髄膜炎の発症が、おたふくかぜワクチン(0.03~0.06%)に比して比較的多い(0.08%)ことが懸念されているためです。しかし、おたふくかぜに自然罹患した場合(1.24%)に比べれば、はるかに頻度は低く、軽症で済みます。現在、より安全なワクチンの開発と共に、定期接種化に向けての検討がなされています。