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B型肝炎

 B型肝炎は、B型肝炎ウィルス(HBV)を含んだ血液や体液に直接接触することによって感染し、人の肝臓に一過性の感染(急性肝炎)または持続感染(肝臓内にウィルスが残ってしまっている=キャリア)を起こします。急性肝炎では、1~6ヶ月の潜伏期間を経て悪心、嘔吐、黄疸、全身倦怠などの症状を発現することがあります。1%程度は劇症感染となり重症となりますが、多くは良好な経過をとり、大部分の人ではウィルスが排除されて慢性化することはありません。ところが、免疫の発達が十分でない新生児や乳幼児が感染するとウィルスを排除することができず、「無症候性キャリア」となり、本人は無症状でも他人へHBVを感染させる可能性のある存在となります。また、本人も感染が持続するため、将来的に慢性肝炎や肝硬変、肝癌へと進行する危険性があります。キャリアである母親から出生する胎児や新生児は、出産時に母親の血液と接触することにより感染(垂直感染)する危険性が高いため、日本では昭和60年より母子間での感染に関して、「B型肝炎母子感染防止事業」が行われています。この結果HBVキャリアの母から出生した児へのワクチン接種等が保険適用になり、HBVキャリア率は0.26%から0.025%と激減しました。

 胎児や新生児の垂直感染のほかに、直接血液に接する機会の多い医療従事者の針刺し事故による感染、免疫力の低下するHIV患者や麻薬中毒患者の感染、性感染症としての感染など特殊な環境下での感染が知られています。しかし最近、日常の場での感染(水平感染)が意外に多いことが注目されています。従来日本で主であったHBVの遺伝子型(C)や(B)だけでなく、海外で主であった遺伝子型(A)が増加していることが一因とされています。遺伝子型(B)や(C)の感染者は3歳以上ではキャリアになりませんが、遺伝子型(A)の場合は成人の感染でもキャリアになる可能性があります。唾液、汗、涙などの体液も感染源になることがわかってきており、保育所での集団感染や父や祖父など母子以外の家庭内での感染の報告もあり、現在の若年層キャリアのほとんどは一般生活における水平感染によると考えられています。近年では「通常の生活をしているかぎり、感染することはありません」といった考え方は、誤った考え方なのです。

 WHOでは、B型肝炎ワクチンの接種は、ユニバーサル・ワクチネーションといって全新生児への接種を推奨しており、すでに約180か国が実施しています。わが国では長年、ウィルスキャリアの母から生まれた児に対する接種のみでしたが、接種年齢が若いほど良好な免疫反応が得られることや、今後国際化により増加すると思われる小児期の水平感染を予防する目的から、平成28年より1歳までに全出生者が接種するよう定期接種化されました。また、これまで接種対象外であった方、特にこれから妊婦さんとなる可能性のある方やその周辺の方々にも進んで接種をしていただき、ご自分はもとより子どもたちや他の人たちもB型肝炎の感染から守ってあげてほしいと願います。